続編

一度完結した作品の続編を作るというのはとても難しいもので、その試みが失敗してしまうという事はよくあるものです。

例えば映画やゲーム。最初の一作目が空前の大ヒット、そして波に乗って二作目も出してみたけど、こちらは目も当てられない状況に・・・という作品はいくつか思い当たる節があります。さらに、一作目の評価が高ければ高いほど、次回作を良い物にするのは大変なものになってしまいます。続編に期待する世間と、今作で株を上げた資本家たちの期待の二つも、作品の良さに比例して高まっていく事でしょう。続編の決定が下された時、制作者サイドはこの二つの重圧に耐えながら、前作を上回る良い作品を作っていかねばなりません。

去年の今頃に初めてこの世に登場し、世間から大変な評価を受けた作品がありました。それは「萌え」というものとはおおよそ無縁の世界にそれを取り入れたもので、その斬新なスタイルから大きな話題となりました。そしてそのジャンルとしては異様な売り上げを記録し、種々のメディアにも取り上げられ、さらには韓国語版としても翻訳されるまでになりました。最初は興味本位で手に入れた自分も、次第に内容やキャラクター達に魅了され、発売されてからというもの、自分の萌えはこの作品一色になってしまいました。

そして、それから約一年。その続編がついに発表されました。

発表されたカバーデザインやわずかながら掲載された数点の絵を見る限りでは、前作とは全く違ったストーリーになっているようです。さらには名前からも「萌え」が消えた事で、「萌え」を前面に押し出していた前作のインパクトが薄れ、派手な発色やタイトルロゴもない落ち着いた印象になり、まるで別のシリーズになってしまったような感じです。

実は、「もし一作目のストーリーを継承しないのであれば、次回作はかなり地味なものになるだろう」とある程度予想はしていました。一作目は、今までに無いものを作ろうという、かなり野心的で実験的な要素が多く、それ故に本来のターゲット層以外にも手に取ってもらおうという制作者側の意図が汲み取れました。もちろん自分は「本来のターゲット層」の範疇からは外れてしまうのですが、ロリ、スク水、ニーソックス、ツインテール魔法少女等を含むありとあらゆる自分の持つ萌え属性、そしてちょっとエロチックなところに見事に(まんまと?)はまってしまいました。あのかわいらしい絵柄による萌えマニア取り込み戦略は大きな成功を得たのは間違いないでしょう。

しかしこの作品は「萌え」の要素はいわば脇役的な物で、本来の使い方としては、登場人物に萌えるだけ、というのは間違っています。この度発表された第二作目はその点をよく踏まえた上で、前作により得られた読者の反応等のデータによってより熟成されたものに仕上がっていると思われます。きっと前作以上に、「本来のターゲット層」からの評価は高くなる事でしょう。

ただし、「萌え」に注目してきた私としては、残念ながら前作以上に萌えることはできなそうです。自分以外の、前作を買ってしまった本来のターゲット層以外の人たちも、今回は「萌え」を得る事は少なくなってしまうかもしれません。もちろん中身を見てない以上は断言できませんが・・・。でもやはり、前作のインパクトが大きかっただけに、前作に出ていたキャラクターたちへの思い入れが大きく、絵師も変わった事で今回再び登場する事をほとんど期待できなくなってしまった寂しさはひしひしと感じてしまいます。

でも、このシリーズが今後もずっと続いて行くような息の長い物になるのであれば、記念すべき第一作に出会い、この作品を通して多くの人々と出会い、自分の人生がより面白く、楽しいものになった一冊の本が歴史にその名を残すものになるのであれば、これ以上嬉しい事はありません。今後も「萌える本」ではなく「実用的な受験対策用英単語帳」として応援して行きたいと思います。


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